第7回
モンゴルからヨークシャーへ
[ 更新 ] 2022.11.01
友人夫妻が誕生日にくれたレコード。ENJI『URSGAL』。
仙台まで来たので、そのまま新幹線で函館に行き、さらに足をのばして札幌に行くことにした。そして、この友人夫妻が営む店で食事をした。そのときに、贈ってもらったレコードを手に入れた場所を教えてほしいと話すと、「明日の夕方に一緒に行きましょう」と誘ってくれた。店は〈chiba house〉という名前だった。てっきりレコード屋だと思い込んでいて、住所を頼りに行くと、店の前で友人たちが手を振っていたのだが、そこはどうもカフェのように見える。
久しぶりに友人夫妻に会えて、あのレコードを買った店に連れて行ってほしいとお願いしたら、そこ〈chiba house〉はレコード屋ではなくカフェだった。
中に入ると、壁際に少しだけレコードとCDを並べたコーナーがあるのだが、そこに置いてあったのは、ほぼ知らないものばかりだった。席に着いてコーヒーを頼む。しばらくして、素敵な音楽が流れ始めた。ターンテーブルのあるほうに顔を向けると、いまかけているらしいレコードのジャケットが飾ってある。静かなこのカフェの雰囲気に合った、男性のギター弾き語りだ。アーティストの名前はクリス・ブレインと読むのだろうか。ヨークシャーというイングランド北部の地方生まれ。ぼくは、昔、札幌に住んでいた頃によく聴いていた、カナダのシンガー・ソングライター、ブルース・コバーンに似ているなと思ったが、本人によれば、ジョン・マーティンやニック・ドレイクに影響を受けているようだ。レコードを買ったら、一緒にクリスが制作した小さなポスターがおまけでついてきたのも嬉しかった。
〈chiba house〉でかかったレコードを買う。CHRIS BRAIN『BOUND TO RISE』
レコードについてきたおまけは、アーティスト自身が撮影したヨークシャーの鳥。彼の生活はどのようなものなのだろう?
東京に戻ってから〈chiba house〉のインスタグラムを覗いてみると、このレコードを盛岡の書店〈BOOKNERD〉のインスタ投稿で知ったと書いてあった。仙台のイヴェントで、ぼくがエンジをかけながら話した相手は、この盛岡の書店主だったのだ。趣味が似た人たちの、ゆるやかなつながりを感じるような買い物になったなァ。