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第261回

好感度がぐっとあがる。

[ 更新 ] 2023.01.10
十一月某日 曇
 今年は、庭の柿の生り年。六年ぶりである。
 毎日カラスやヒヨドリやメジロが来て、喜んで食べている。
 人間もわけてもらおうと、背の届くところは手でもぎ、高いところのものは高枝切りばさみで、ゆっくりと収穫する。
 近所の友だちのところへ、柿のおすそわけに。
 しばらく友だちの家で、おしゃべり。友だちの飼っている犬が、ソファに座っているわたしの隣にやってきて、くっついてくる。
 ひざの上にも、のっかってくる。
「誰にもなつかない犬なのに、ふしぎ」
 とのこと。
「かまわれるのが大嫌いなので、犬好きの娘の夫が遊びにきたときには、隠れてしまって絶対に姿をあらわさない」
 とも。
 おそらく、わたしが内心犬にほとんど興味がなく、それどころか、小さいころから犬が少しこわくて、できれば近寄りたくないことを、犬の方で敏感に感じ取っているにちがいない、という結論に。
 でも、なついてくれて、一日で犬好きになってしまったような気持ち。
 こんなにくっついてくる犬なら、わたしも一緒に暮らしたいかも……。

十一月某日 晴
 柿のおすそわけに、近所の知り合いの家へ。
 ここにも犬がいる。
 前日の、友だちのところのなついてくれた犬のおかげで、犬に対する心構えがたいへんに柔らかくなっているので、にこにこしながら、
「やあ」
 と、犬に声をかけたら、ものすごい勢いで吠えられ、威嚇される。

十一月某日 曇
 少し前から、ふたたび新型コロナの感染者が増えつつある。
 東京の新規感染者は、今日は7777人。
 昔、実家で乗っていた車のナンバーが、7777であったことを、突然思いだす。
 車は白くて、小さくて、時々故障した。めでたいナンバーなのでと、お正月に宝くじを買ったが、当たらなかった。十年乗って、わたしと弟が大きくなったので、そのあとはもう車のない暮らしになった。
 今でも、タクシーなどに乗ると、道路を走っている車のナンバーを見るのが好きなのだが、いまだに7777ナンバーの車は、見たことがない。

十一月某日 晴
 イギリスに住んでいる友だちが、日本に一時帰国してきたので、会う。
 友だちは、ロンドン郊外の、近所に住んでいるゲイカップルと仲がよくて、しばしばWhatsAppでかれらの家の写真を送ってくれる。
 とても、センスのいい家である。
 センスいい家具、センスいい配置、そしてたくさんのセンスのいいものが、棚などに、ぎっしりと置いてある。
「ああいうふうに、たくさんモノがあるおうちって、どうやって掃除するのかな」
 と、友だちに聞くと、
「ああ、かれらの家は、掃除しないの。センスはいいけど、掃除は嫌いなんだって。だから、床とかすごいほこりだらけ」
 とのこと。
 そのゲイカップルに対する好感度が、突然ぐっとあがるのを内心で感じつつ、ロンドン郊外方面に、祝福の気持ちを送る。
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