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第5回
ピクニックのカルチャーギャップから学んだこと。
[ 更新 ] 2024.05.31
なにをしているかって? 日焼け&日光浴です。
みな、本やワインを手に、水着になったりして、じっと寝そべっています。
特にイギリスの肌が白い人たちは、夏の間に小麦色の肌になることに憧れているみたいなのですが、絶対に肌を焼きたくない派の私からすると「あなたたち、日陰に入りなさい! UVが肌にあたえる多大なダメージを知らないの⁉」と叫んでまわりたくなるくらいの光景です。
もちろん、公園にいるすべての人が肌を焼くための日光浴をしているわけではありません。お散歩やジョギングをしている人も多いし、天気のいい日は公園でピクニックをしている人もたくさんいます。そして、私もピクニック大好き人間なので、その一味です。
イギリス流のチルなピクニック。
ところで、ピクニックとなると私はついつい料理をあれこれ準備して、「スイーツも、お茶も、お酒も、氷も、お手拭きも、ゴミ袋も、もちろんピクニックシートも準備しないと!」とやる気満々ウキウキ気分の大荷物で参加しがちなのですが、今までに出会った多くのイギリスの人は、シートがあってもなくても、ピクニックポイントに到着した瞬間に芝生に腰を下ろし瞬時にリラックスします。お尻が少々汚れても気にしない。
持参するものもお酒とフルーツやポテチのみ、みたいな、そこらへんのスーパーでさっと手に入るものだけのことが多いです。まさしく今流行りのエフォートレススタイル。
最初にイギリスの人とピクニックした時のこと。イチゴ1パックだけを持ってフラッと現れた友人の姿を目の当たりにし、早起きをしてあれこれと料理を作ってきた私は「ちょっ! それだけええええええええ!????」と膝から崩れ落ちそうになったことを覚えています。
今となっては、あれこそが正真正銘のお手本のようなザ・カルチャーギャップだったのだ。
でもさ、ロンドナー12年目の今、あれやこれやと美味しいものを取り揃えてワイワイする日本式のピクニックも大好きだけど、イギリス式のサラッとゆるっとチルな感じでグリーンなモーメントを楽しむスタイルも、真似をしてみるとそれはそれで気分が良いものだなと知ることができました。
たとえそれがイチゴ1パックだけだったとしても、もう膝から崩れ落ちない。
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児童館で寝っ転がる職員。
子育てを通しても、日本とイギリスでのカルチャーギャップはたくさんありました。
息子がまだ幼児だった頃によく通っていた児童館では、保護者もスタッフもゴロンと床に寝っ転がりながら楽しそうに談笑していたりしました。チル!
暑い日におむつ一丁の幼児が公園を闊歩していても誰も気にしないし、子どもがカフェで大声を出しても「ワッハッハ、良いシャウトだね!」と見ず知らずの人が面白い感じで反応してくれたり。キッズ用お弁当も、サンドイッチ(具はきゅうりだけとか、チーズだけとか)、カット人参にポテチだけとか、エフォートレスな内容が多い。
こういった全てのことが日本出身の私からするととても新鮮でした。
そんなに気を使ったりがんばったりしないでもいいんだ、と思える場面がたくさんあったのです。
いっぽう親になってからの日本滞在では、子ども用施設の綺麗で隅々まで管理が行き届いている様子、お子様ランチの種類が豊富で彩りも鮮やかでキュートなところ、電車やバスで子どもが座席に靴をのっけずにきちんと座っている光景などにいつも感激します。
スーパーや雑貨屋さんに行くと、キャラクターがかたどられた海苔とかおしゃれなポチ袋とか、生活の細部にまで配慮の行き届いた商品をたくさん見かけます。なんというか、毎日を可愛く清潔に快適に過ごそうという雰囲気をめいっぱい感じ、親の自分もウキウキするのです。
結局、私はどちらのカルチャーも好きなのだ!
「当たり前」が1つじゃないことの風通しの良さ。
ところでイギリスの離乳食は、日本のようにお米をとろとろにした10倍粥でスタートするのではなく、茹でた人参やブロッコリー、バナナ、アボカドなどの固形物からスタートするやり方が人気だったりします。赤ちゃんの目の前にこれらの食材を並べて、好きなものを手づかみで食べさせるのです。もちろん赤ちゃんなので、食べ散らかしたりして掃除も大変。
でも、この方法が子どもの自主性を育てると言われているそうです。
この離乳食スタイルを子育てセンターで習った時、私もイギリスで子育てしているしチャレンジしてみてもいいかも、と一瞬思ったのですが、やっぱり日本式のお粥スタイルに馴染みがあった私は、「赤子に最初から固形物を与えるのがなんだか怖い」という思いが勝ってしまい、けっきょく10倍粥でスタートしました。
いっぽう、私と同じように「イギリス式の離乳食のやり方はちょっと斬新すぎてムリ!」と言っていたイタリア人のママ友が、離乳食はイタリア式にパルメザンチーズからスタートすると教えてくれた時、「パルメザンチーズも私にとっては斬新だな!」と思ったことを覚えています。
周りを見渡せば、さらに他の国にルーツがある保護者たちは、これまたぜんぜん違う食材から離乳食をスタートさせたりしていて、人間が最初に口にする食べ物ですら世界には様々な「当たり前」があるのか、と実感したのです。
離乳食以外でも、幼児にピアスの穴をあける文化や歯の生えはじめの頃にネックレスをつけさせる文化があったり、息子の通うナーサリーの保育士さんで髪をグリーンに染めている人や全身タトゥーの人、全身蛍光イエローの出で立ちをよくしている小学校の用務員さんとか、日本の子育て常識からあまり想像できないような人々がロンドンには普通にいたりする。
UVの脅威のとらえ方、ピクニックのエンジョイの仕方、子育てにまつわるいろいろ。
世界には「当たり前」の種類がたくさんある。
あの衝撃のイチゴ1パックの日からずいぶん月日は流れ、今ならわかるのです。
食べ物を手提げパンパンにつめこんで、やる気満々でピクニックを始めようとした私を見て、「この人なにする気⁉」と友人も内心驚いていたのかもしれない。