第283回
茄子丼の日々。
[ 更新 ] 2024.11.11
ジムに、踊りにゆく。
回転をする時、足指ではなく、足の肉球の部分をしっかり使うように、という助言を、先生が。
肉球!?
と、みんなで驚くが、なるほど、自分の足が猫の足になったつもりで、指のつけ根のさらに元の部分をもっと意識してみると、回転がスムーズに。
レッスンが終わってから、
「肉球、すごいね」
「うん、肉球だったんだね、あそこ……」
と、みんなで言い合うが、一人がぼそりと、
「肉球、役に立ったけど、でも、人間の肉球部分、ぷにぷにしてなくて、さみしい」
とつぶやいたので、しばらくみんなでしんとする。
九月某日 晴
今年、とてもおいしい茄子を送ってくれた人がいて、その茄子は、加茂茄子をずっと小さくしてさらに密度高くした感じのものなのだが、これがほんとうに、みっしりとしていて、とろりとしていて、おいしい。
ただし、煮てしまっては、ふつうの茄子と同じようにくたりと水っぽくなってしまうので、油で炒めたり揚げたりすることが、望ましい。
薄く切ったその茄子を、毎日少しの油で炒め、生姜醤油味をつけ、ご飯にのせて、茄子丼を作り、昼ご飯としている。
とてもたくさんの茄子を送ってもらったので、すでに十日以上茄子丼の昼食が続いているが、まったく飽きない。
九月某日 曇
といっても、少しだけ、茄子丼にも飽きてきて、しかしすべての茄子を食べてしまわないと、どんどん茄子の種が増えてくるので、今日も茄子丼。
午後、体重をはかる。
この体重計は、体重に関してはとても正確なのだが、体脂肪率に関しては、とても気まぐれなので、面白くて毎日はかってみているのである。
まず乗ってみて、出てきた体脂肪率が、昨日よりも二パーセントも増えているので、直後にもう一度乗ってみると、三パーセント減っている。
五秒で、体脂肪率が三パーセント減少します!
といううたい文句をつぶやきながら、体重計から降りる。
さて明日は、どのくらいの体脂肪率の増減が待っているだろうか。
そして、体脂肪の上下動の激しさは、毎日の茄子丼と関係しているのだろうか。
九月某日 晴
ジムに行き、踊る。
レッスン仲間が、少し前に新型コロナにかかり、味がわからなくなったと言う。
「で、せっかくだから、いろいろなものを食べてみて、どんなふうに感じるか、試してみたの」
とのことで、
〇果物はおいしくなかったが、ゼリーの中に入っている果物は、おいしい。
〇餃子は、へんな味になる。
〇すき焼きは、前と同じようにおいしい。
〇しょっぱい系では、梅干しがいちばん本来のしょっぱさに感じられる。
などの結果を得たとのこと。
現在は、もう味覚は戻っている由。
その実験精神に、打たれる。と同時に、茄子丼と体脂肪率の関係に関して、まったくエビデンスのない適当な関係性を安易に考えついた自分のだめさを、反省。
夕方まで反省し、明日は茄子丼を食べないでみることを決意する。
九月某日 晴
茄子丼を食べた日と、食べなかった日の体脂肪率の上下具合を、しばらく記録しているが、まったく関連性がないことだけがわかる。
ようするに、体重計が適当だ、という結論に達しそうになるが、体重計のせいではなく、わたしの体質が、体脂肪率が上下しすぎる特殊なものである、という可能性も捨てきれず。
ようやく茄子が、残り五個になる。