
第15回
甘くて美味しい栗羊羹
[ 更新 ] 2025.07.09
コーヒー店に入り、英語メニューがあればオンライン注文する。なければ半端な英語で強引に理解してもらおうとする。カフェにはだいたい音楽が流れているし、アナログレコードを聴かせてくれる店も行くたびに増えている。でも、なぜかそれは欧米の曲であることが多く、知らない韓国のポップミュージックを聴くことはほとんどない。
今年の4月はソウルからKTXに乗ってプサンに行った。プサンは港町で、大きな都市ではあるが、全体のテンポはソウルに比べて緩やかである。1泊2日だったけれど、この街がすっかり好きになった。プサン駅で、帰りのKTXの発車までずいぶん時間があったので、コーヒーショップを探した。建物の2階なのだろうか。改札口がある階だ。そこで見つけたコーヒーショップに入る。席に着いてしばらくすると、BIBIの「栗羊羹(パンニャンゲン)」という曲が流れてきた。カミさんがよく聴いているチャン・ギハがつくった歌。カミさんの薦めで東京でもよく聴いていた。でも、自分の好きな韓国の音楽を、韓国で偶然に耳にする感激にはひとしおのものがあった。
ソウルに戻ってから友人が連れていってくれた店は、彼曰く「虎屋のような店」、2階がカフェで、ホドゥカジャ(くるみ饅頭)やヤンゲン(羊羹)とともに、コーヒーやオミジャ(韓国の漢方茶)を飲める。友人にパンニャンゲンを注文してほしいとお願いした。念願の韓国の栗羊羹を食べながら教えてもらった例の歌の歌詞は、思ったよりも悲しい内容だった。
「タルディタルゴ タルディタルゴ タルディダン パンニャンゲン パンニャンゲン」。まるで言葉遊びのように聴こえるリフレインが、いまも頭の中をくるくる回っている。

プサン駅。プサン広域市はソウルに次ぐ韓国第2の都市だ。

プサンのコミュニケーションキャラクター「ブギ」。名前はプサン・カルメギ(プサンのカモメ)に由来。コーヒーストアにも飾られていて、コーヒーカップを持っている。プサンの名物はオムク(さかなの練りもの)だからかオムクを持ったぬいぐるみを土産物屋で見かけた。買っておくべきだった。

BIBIはR&B歌手で女優らしいのだが、詳しいことは知らない。韓国の音楽も配信が主体なので、フィジカルが欲しいぼくには厳しいところ。

ソウルでお土産に買った栗羊羹。日本のものよりも柔らかく、水羊羹と本煉羊羹の中間くらい。消費期限も短かった。