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第2回

スペースオペラと昭和の悪い冗談
映画配給収入ランキング 1980年 1位『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』

[ 更新 ] 2026.07.15
※本連載は、映画をあまり観てこなかった著者が、自分の生まれ年から順に毎年の映画配給収入ランキング1位の作品を観て素直に感想を述べるエッセイです。


 言うまでもないか、『スター・ウォーズ』シリーズの公開順にして2作目、エピソード5だ。

 『スター・ウォーズ』を、いわゆる未履修のまま今日まで生きながらえてしまった。

 作品世界のキャッチーさやポップさに、長らく憧れてはきたのだ。つい手がすべって、作品を観たこともないのにレゴの店でダース・ベイダーのマスコットのマグネットを買ったこともあるくらいだ。何かの拍子に肝心のマスクがなくなって、顔面むきだしで冷蔵庫にくっつけているものだから、物語の詳細を知らないまま、長らくベイダー卿に対して申し訳ない気持ちだけがある。

 エピソード4(第1作)だけは、テレビで放送されているのを横目で何度か観た程度の既視感はあった。復習して曖昧さをクリアにしてから、本作を観た。

 いまさら何をということをここで元気いっぱい表明させていただくと、すべてのメカがかっこいい。物語における正義の側である反乱同盟軍のも、悪の側である帝国軍のも、おしなべて全部つっこみどころなく美しい。とくに帝国軍の、歩行型の陸上兵器であるAT-ATにはしびれた。

 足が長すぎるグレーの黄金こがねむしみたいな躯体で、重量感を持ってゆっくり歩いて迫る。設定によると、装甲が堅牢で砲撃がほとんど無効だという。攻撃性能も高く、物理弾は飛ばさない、エネルギー系の2種の砲門を搭載する。重レーザー砲で長距離の目標を破壊しつつ、ブラスター砲で近距離を掃射する戦車のような設計がなされ、なのに思い切りを感じるほどに足が長くコックピットが高位置なのだ。

 初見の素人をもこんなに早口にさせる魅力。 現実世界における戦争絶対反対、武器という武器のいっさいを世界からなくそうと、その思いのたけがたぎりきる恐ろしさだ。

 存在だけは知っていたあのヨーダの登場や、ユニクロとのコラボTシャツにプリントされていて知ったセリフ、「I am your father.」が聞けるなど、これがあの、という感慨も存分に得た。

 金色の人型ロボットであるC-3POの吹き替えの軽妙さは、以前から知っていたスター・ウォーズ情報のひとつだ。だから今回は鋭意、吹き替え版を視聴した。
「I am your father.」は、「おまえの父はワシだ」だった。
 冷蔵庫のマグネットを眺めては、一人称は「私」のつもりでいたのだけど、「ワシ」だったのだな(訳により違うとは思うものの)。

 姫のレイアと宇宙の無法者ハン・ソロによる、ツンデレの恋愛模様がたっぷり観られたのも予想外だ。大ピンチの状況にもかかわらず、もしかしたら好きかもしれない、どう考えても気になっている相手に、「あなたの最後を、この目で見届けてあげます」と憎まれ口を言う姫よ。

 バチバチに睨み合いながら、でも大好きで、キスしちゃう。それが『スター・ウォーズ』だとは聞いてない。

 立場とプライドのせいで、自分の好意が信じられない状況が織りなす、ファンタジックなまでのふたりの素直になれなさ。現在の地点から見ると、恋愛劇の、ほとんど伝統芸能だ。

 この手のツンデレ的なコミュニケーションは、かつては今よりずっと身近なものだったなとも思わされた。姫一行がハン・ソロの旧友であるランド・カルリジアンに出迎えられるシーンも、ドッキリ的なユーモアがツンデレに似た味だ。

「よくおめおめと現れたな。たいした根性だぜ」(殴りかかるかと思いきや、急にハグ)「よく生きてたな、この悪党、会えてうれしいぜ」

 はっとして、昭和の時代の年長者の、悪い冗談を思い出す。スペースオペラに昭和らしさを重ねられるのは、今観るからこその味だろう。

 断片的な印象を超えた、映画の物語としての『スター・ウォーズ』の一端に、やっと飛びついてしがみつくことができた。
 まだまだ、フォースと共にあるほどではないけれど、取り急ぎ、ベイダー卿の兜のパーツは買って(売っているだろうか)、マグネットのマスコットにかぶせよう。


1980年 日本配給収入トップ10

1位 スター・ウォーズ 帝国の逆襲
2位 影武者
3位 復活の日
4位 007/ムーンレイカー
5位 地獄の黙示録
6位 二百三高地
7位 クレイマー、クレイマー
8位 ドラえもん のび太の恐竜/モスラ対ゴジラ
9位 ヤマトよ永遠に
9位 戦国自衛隊

 一時期、大人の映画といえば『クレイマー、クレイマー』のことだと思っていた頃があった。

 この年は、『影武者』、『地獄の黙示録』、それにドラえもんファンとしてはタイトルを見るだけでもう泣ける『ドラえもん のび太の恐竜』と、その後名作として語り継がれる作品が並ぶ。それを押しのけて、私は7位の『クレイマー、クレイマー』にインパクトを感じたらしい。

 核家族化や離婚率の上昇が目立ちはじめたこの頃、離婚や小さな子どもの親権を扱ったこの作品への、身近な大人たちのざわつきが伝わったのかもしれない。
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