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第1話

ご贔屓には出会えましたか?

[ 更新 ] 2023.09.25
みなさまごきげんよう、こう見えて元タカラジェンヌの天真みちるです。
先月7月7日、七夕の日からスタートしましたこちらの連載、第2話でございます。
第2話なのですが、前回が「第0話」だったので「第1話」となっております。

……ややこしい。

まぁ、あまり深く捉えず、「考えるな! 感じろ!」の精神でやっていきますので今後ともよろしくお願いいたします。

アナタはすでに
前話にて、タカラヅカという夢の扉の開き方までレクチャーさせて頂きました。
……その後、いかがでしょうか。
花・月・雪・星・宙という5つの扉のうち、どれか1つの中へ踏み出すことはできましたでしょうか。
皆さまそれぞれご都合がありますので、急かすつもりはございません。

ですが……時間は有限です。

「なぜ、もっと早く出会えなかったのか……」
そう思っても、時間は巻き戻すことはできないのです。
なので、できれば早めに一歩踏み出して頂ければ幸いです。

ここからは、ご自身の「扉=ご贔屓の組」を見つけ踏み出した方へ、「次の一歩=ご贔屓のスターさん」のご案内をさせて頂こうかと思います。

まだ出会えていない方、見当もつかない方もご安心ください。
実はもう……「ご贔屓は決まっている」のです。
ただ、アナタはそのことにまだお気づきになられていないだけなのです。
では、どうやってそれに気づいたらよいのか。
胸に手をあて、ゆっくりと自問自答しながら読み進めてみてください。

気づきの要素Best5
歌舞伎の有名な格言に「一、声 二、振り 三、姿」という言葉があります。
優れた役者は印象的なパフォーマンスを届けるために、

一、声
抑揚のあるセリフ回し、心に残る歌声「寝ても醒めてもあのお方の声が脳内リフレインで叫んでいるのよね」
鬼滅の刃の産屋敷耀哉様もビックリの1/fゆらぎ

二、振り
魅惑的なダンス「あんなに高く跳躍しているのに、着地の音が全く聞こえなかったわ……もしかして……妖精?」
捌け際の美しい去り方「暗転してからが勝負なのよ! 袖に捌ける姿をオペラグラスで追うワケよ」
形式美を感じる所作「普段から王宮で過ごしていなければ、あんなに自然にドレスをさばけるはずがないわ……!」

三、姿
背中が語る哀愁、もはや芸術品である立ち姿、黒燕尾を着るために生まれてきたのかな?と思わせる程の真っ直ぐな姿勢、前世が確実に貴族だと思わせる程の完璧なドレス姿

という、3つの要素が大切だと言われています。
そこに、私なりに大切だと思う要素である、

四、ドキュメンタリー
ご贔屓の方に備わっている人柄、品位。「群舞のいっちばん最後尾で踊っているあの子、とっても楽しそうに踊っているわ……!」
在団中に起きる様々な事柄によって変化してゆく舞台姿、「初めて観た時とは比べものにならない位パフォーマンス力が上がってる……!」

五、ボキャブラリー
宝塚歌劇団専門チャンネル「タカラヅカ・スカイ・ステージ」内の番組にて、公演について語る生徒達から垣間見える「この子、実はとんでもなく面白い子なのでは……?」という片鱗、時に魅せるアドリブ力、「毎回違う事(ネタ)しているのかしら……? 毎日通わなきゃ!」と思わせる程のコメディエンヌっぷり

を足した、「一、声 二、振り 三、姿 四、ドキュメンタリー 五、ボキャブラリー」の5つの要素が重要なのではないか、と思っています。

気が付くと目で追いかけているあのタカラジェンヌさんは、どれが一番印象的なのか……? 以上の5つの要素から紐解いて頂ければと思います。

ちなみに筆者はどの要素に惹かれるかというと、「二、振り」だったりします。
憧れのタカラジェンヌさんが、憧れのタカラジェンヌさんの所作を継承している姿を見ると、「歴代トップさんの息吹が感じられる……こうやって伝統は継いでいかれるのね……」と、無条件に涙が溢れてしまいます。
回文のような表現ですが、伝わってくれ……!という想いであります。

ご贔屓は何も演者だけではない
さて、ここまでつらつらと書き連ねて参りましたが、ご贔屓とはなにも「舞台に立つスターさん」だけではございません。

舞台のコスチューム、衣装を作る「衣裳部」、セットの製作や転換を担う「宝塚舞台」、テーマ曲や伴奏を奏でる「オーケストラ」の方々も、宝塚歌劇団所属なのです。

ここからは、そんなタカラヅカの夢の世界を作るための大切な役割を部門ごとにお話ししていきたいと思います。

その① 舞台セット
開演ブザーが鳴り、緞帳が上がると一番初めに目にするものが舞台セットです。
お芝居では時代や建築物の再現、ショーではタカラヅカの象徴でもある「大階段」の装飾やテーマカラーなど、細部にまでこだわった夢の世界が目の前に拡がります。
作品の額縁、枠組みであり、壁画でもあります。

筆者がタカラヅカを初めて観た、1999年宙組公演『激情~ホセとカルメン~』では、日比野克彦さんが手掛けた舞台セットがあまり見たことのないビビッドな色彩で構成されていてとても印象的でした。

筆者の初舞台公演である2006年宙組公演『NEVER SAY GOOD BYE』では、物語の舞台である、スペインの街並みや、世界遺産であるサグラダ・ファミリアが忠実に再現されていて、公演中ちょっとした旅行気分が味わえました。

柚香光ちゃん主演の2014年花組公演『ノクターン~遠い夏の日の記憶~』という公演では、ロシアの白樺の森の木が「布」でつくられていて「そう来たか!」と痺れました。

明日海りおさん主演の2017年花組公演『金色の砂漠』という作品では、架空の砂漠の古代王国の建造物のセットがめっちゃ壮大すぎて、盆が回る中で狩りをするシーンでマジで迷子になりかけたことがあります。
下手でスタンバイしたはずなのに、気づいたら上手にいました。ビビりました。

その② 衣裳デザイン・衣裳制作
舞台セットと共に、芝居、ショーと、上演する演目の世界観を表現するために欠かせない衣裳。
男役の象徴でもある黒燕尾をはじめ、娘役さんの夢夢しいドレス、作品の時代に沿った装束、更にはこれぞタカラヅカ!という背負い大羽根をデザイナーさんがデザインし、衣裳部さんが製作されます。

筆者が入団した際、トップスターさんの「総スパンコール」のお衣裳が、一つずつ手縫いで縫製される様を見て、とてつもない手間がかけられた、世界に一つだけのオートクチュールであることを知りました。
大切につくられた衣裳を大切に着ようと心に誓った瞬間でもありました……その割に階段から落ちたり、舞台セットから落ちたりする役が多かったのですが。

筆者はショーでは何名かずつで配色を変え、全員がステージに並んだ瞬間に団体美として見えてくる美しさが好きです。
これは特に、A席やB席など、2階席の方が、前述のセットと共によりハッキリと見ることができます。おススメです。

その③ 指揮者・オーケストラ
タカラヅカは毎日毎公演オーケストラによる「生演奏」で上演されています。
芝居ではシーンごとに寄り添うBGMや、登場人物たちの歌唱を支え、ショーではお客様のテンションを上げるポジションも担い、また、指揮者は作品の中でトップスターさんの早変わりを手伝ったり、大きいネズミ(ヒント:『オーシャンズ11』)を出したりと、芝居に出演することもあります(演出家が限られますが……)。

筆者はその昔、2010年花組公演『虞美人~新たなる伝説~』という作品の新人公演に出演した際、芝居中で流れているBGMの音変わり(繰り返しで演奏していたパートの切り替わり)のキッカケのセリフをど忘れしてしまい、指揮者の先生に死ぬほど迷惑をおかけしたというほろ苦い(どころじゃない)思い出があったり……

セリフが出てこない間、オーケストラボックスの指揮者の先生が「うん!? うん!? 今……どこだ!?」とパニクっていたのを、なぜかやらかした筆者が冷静に見つめる……という謎の時間が繰り広げられたことがあります。
未だに夢でみることがあり、そのたびに心臓がキュッとなります。

その④ 作曲家
芝居やショーの演出家が届けたい作品のメッセージを、テーマ曲で、振付で、殺陣で表現し、場面を印象付ける方々。

芝居では登場人物の心の機微を表現するソロ曲をはじめ、ショーでは気が付けば終演後口ずさみながら帰れるほど、メインテーマが印象的です。
作品を超えてずっと歌い継がれる楽曲もあり、とても心に残ります。

ただ、筆者は未だに「この愛よ永遠に~TAKARAZUKA FOREVER」という曲の歌い出しが「人は夢見る」なのか、「人は愛する」なのか一瞬躊躇します。

その⑤ 振付家
コンテンポラリー、クラシックバレエ、ジャスダンス、シアターダンス、タップダンス、日本舞踊など、様々なジャンルのダンスの先生がいらっしゃり、トップスターさんが銀橋を歌いながら渡る際のステージング、大階段を使用した男役黒燕尾の群舞やフィナーレのパレードなど……場面によって変わる人数や規模に応じて振り付けされます。
宝塚歌劇団に所属されている先生もいらっしゃれば、作品によっては海外から振付家の方をお呼びすることもあります。

在団当時の筆者は、振付当日は覚えることが多すぎて思考回路がショート寸前になっていたのですが、その後何度も何度も自主練習して身体に沁み込んだ瞬間の、振付と身体の一体感がとても好きでした。

筆者が2014年花組公演『エリザベート~愛と死の輪舞(ロンド)~」という作品に出演した際、1996年初演時から踊り継がれている羽山紀代美先生振付のフィナーレの男役群舞を踊れた時は、嬉しすぎて涙が出ました。

羽山先生との思い出をもう一つ……
2016年花組中日劇場公演『アーネストインラブ』内のとある場面にて、羽山先生振付の男役もメイド服に身を包んだ総踊りのシーンがあり、当時ゴリゴリの男役であった私も漏れなくそのメンバーに入りました。
本番直前の舞台稽古にて、羽山先生が諸々の確認を済ませた後、最後に「それから天真……」と私を呼びました。
振り付けを間違えてしまったのか、何か不備があったのかとアワアワしていると、羽山先生は一言、「似合ってるよ」と。
まさかのお褒めの言葉を下さったのでした……とても嬉しかったです

その⑥ 演出家
これまで紹介した①~⑤の全てを采配し、作品を創るのが演出家の先生になります。
タカラヅカでは基本的に演出家の先生が脚本(オリジナル)も手掛けるので、演出家の先生の「世界観」がダイレクトに作成されます。
例えば……

とある先生A
・色気があるけど品がいい、ザ・宝塚な作品。
・歌舞伎の型ならぬ宝塚の型を見せる演出。
・日本の古典に題材をとった演目を多く手掛ける。
・実は兄妹だったり、敵の婚約者だったりとドラマチックな展開が多い。
・言葉遣いが美しく、一度聞いたら忘れられない印象的なセリフがある(「来るんですか、来ないんですか」)。

とある先生B
・海外ミュージカルから少女漫画名作まで、注目度の高い大作の巧みなタカラヅカナイズ演出。
・舞台機構(盆やセリ)をフル活用のダイナミックな舞台づくり。舞台稽古の際にうっかりしていると迷子になる事も。
・一幕最後の登場人物総出のコーラスの迫力&二幕への期待を高めるわくわく感の演出。
・裏社会で生きる男の悲恋が好き。
・自己紹介のシーンはセリフではなく歌で構成されることが多い。通称自己紹介ソングが毎回の楽しみでもある。

とある先生C
・漫画好きの映画マニアならでは、細部にこだわったサブカル色溢れるポップな演出。
・わいわいがちゃがちゃ楽しいシーンがある。
・幼なじみ同士や初恋など親しみやすい恋愛設定。
・ハッピーエンドが多く、悪役はそもそもいないか、いても改心する。

とある先生D
・サブタイトルに見たことない&聞いたことない漢字の読み&言い回しが使われがち。
・ポスターから衣装にいたるまで、綿密に作られた物語の世界観を味わえる。
・ヒロインがさまざまな出来事を乗り越えて自立しがち。

先生の届けたいメッセージは、アイドル、アニメ、インド映画と多種多様です。
様々な「フュージョン」が体感できるかと思います。

終わりに
……いかがでしたか。

ここまで紹介させて頂いたものは全て、観劇の回数を重ねていけばいく程、「この色味の重ね方は○○先生の衣裳だ……!」とか、「おっ……! これは○○先生の振付だ……!」とか、「○○先生の作品は、必ずと言っていいほど男役さんが女役を演じるなあ」など、より細かく味わい深くなっていくと思います。

ぜひ、スターさんとご一緒に舞台機構やスタッフの方々の「ご贔屓」にも出会って頂けたら幸いです。

次回「タカラジェンヌクロニクル~もしも、島耕作が宝塚歌劇団に入団したら~」。
それではまたの機会に……。


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