第8回

0歳児の次女N美の保活日記

 こんにちは。第6&7回と「保育士と親はもっともっとつながれる! 子どもたちの"根っこ"を育てる場の作り方と伝え方」をお届けしましたが、小金井市内の保育関係者にたくさんシェアしていただくなど、それなりの反響があった、という話はしましたね。
 実際、僕も仕事場をシェアしている友人(フリーランスで2児の母)が、保育園や学童保育にまつわる様々な活動をしているということもあり、あのあと、いろんな縁に導かれまして......。
 今回はそういった記事への反響と、我が家の次女N美の保活の現状について、とっ散らかりながらも書いていきます。

■理想と現実のハザマのモヤモヤ
 記事公開後は、こんなことがありました。例えば、記事を読んでくださった学保連(小金井市学童保育連絡協議会)の役員の方や、子育て分野に力をいれてらっしゃる市議会議員の方、記事で紹介してきたワーママ・長澤麻紀さんたちとの飲み会に参加。そこではやはり「保育の質」や「広く子育てに通じる話」についてなど、ワイワイ語り合うわけです。
 しかもただ楽しく話すだけでなく、(メンバーがメンバーだけに)より良き政策を作っていくためにはまず誰々に話をして、次のあの会議の場でこういう提言をしていこうとか。これってまさにアドボカシー(政策提言)の世界! いやはや勉強になります。

 一方、Facebookでこの記事を紹介するなかで、「自分で仲間たちと保育園を作れないか」といった希望や、「都市部とは違った、地方ならではの保育の素晴らしさに触れた」といった感想、「認可外の保育園の園長をしているが、少人数で子供たちと丁寧に触れ合えるが、経営は大変」と言ったリアルな悩みを書き込んでくださる知人たちもいて。
 とにかくこういった自由な議論の土台として、今回の鼎談記事のような「目指すべき保育について言語化された資料」があることの大切さを、一人の親としても、物書きとしても強く実感できたわけです。

 しかしですね。その一方で、僕にとって一番向き合って話さないといけない妻さまに、改めて記事について「どう思った?」と聞いてみたら、こんな答えが。
 「伝えたいことの意味はわかる。保育の質が大切なのも、保育士と親がタッグを組めるのもいいなぁって思う。でも......、やっぱり保育園に入れなかったら、その話はなかなか"自分ごと"として読めない!!」

 いや、そりゃやはり正直、うーん、そうだよね(苦笑)。妻のみならず、「記事の内容はよかったけど、実際には難しいよね」といった意見を知人数人から聞いていたので、理想と現実のギャップについてベタに考えさせられたというか......。
僕自身もそんなモヤモヤした気分をぬぐいきれないなかで、あの鼎談の時間を過ごしたし、そのあたりの複雑な思いは、笑いを交えながらも実際に記事のなかでも触れた通り。

 でも! それでも僕はこの鼎談を実現できて、こうして記事として公開できたことは、とてもよかったと思っている。保育に関して確固たる軸がない僕は、ともすれば目の前の忙しさにかまけ、消費者的なノリに絡め取られ、「このご時世、保育園なんて入れるだけでありがたいんやから......」となりがちなところを、踏みとどまれるようになったというか。
 妻の仕事も忙しくなってきているし、次女N美もなんとか保育園に入れたい......。けどね、それでもそこに実際に通うのは親でなく子どもであり、だから自分が住んでいるエリア(現在は小金井市なわけだけど)で、保育士によってどのような保育実践が守られ、引き継がれ、それを親たちがどう感じてきたのかを含めて、一旦言葉にして、「自分ごと」にしてみようと思ったわけで。そうすれば今後判断できることはきっと増えるだろうと思ったわけだ。

 実際に、長女M子の送り迎えの際に、以前よりも先生たちの日々の実践を丁寧に見つめるようになり、家庭の話も積極的に語るようにして、家と保育園での子どもの日常を地続きで捉えるように心がけたり。ささやかながら起こせる変化はたくさんあると思った次第です。

■虎視眈々と「空き」を狙うも......
 そのあとは相変わらず役所に足繁く通い、認可保育園の0歳児の空き状況をチェックする日々。同列グループの園だけなぜか空きがあったりすれば、裏事情でもあるんじゃないかと思い、この手の情報に詳しいママたちに確認して「ああ、やっぱいろいろあんねんなぁ。役所はそういうこと絶対教えてくれないし」と思ったり。
 認証保育所(※1)を含めた認可外保育園に1件1件問い合わせ、「いやぁ、空いてないですねぇ」と言われ、また役所で「認可外なら、国分寺市や小平市など、市を越境しても入園できますので、リスト持ってきましょうか」と提案され、一応プリントアウトしていただくも、車を持ってない我が家が電動自転車でそんなに遠くまで日々送り迎えするのはやはり困難であることに落胆し......。

 話は変わるけど、例の第6&7回の記事を書く際には、小金井保育園の小方園長に登場していただくにあたって、ちゃんと小金井市保育課長殿に取材依頼書なるものを出しているんですね。つまり公式のルートを通して取材させてもらったので、さすがに課内でもあの記事は回っているだろうと思ってまして。だから、ちょっとなんて言うのかな、自意識過剰なんだけど「ひょっとして、窓口行って名前言ったら俺のことわかんじゃね!? しかも小方園長と俺、顔出しで写真だって掲載されてるし、面われてんじゃね!?」みたいな期待もあり(笑)。

 それでですね......、役所に行ってちょっと「アピった」わけですよ。

アサダ 「ええっと、アサダと申します。アサダワタルと申します」
担当者 「はい、アサダさんですね。今日は保育園のことで相談ですか?」
アサダ 「はい。アサダです。保育園に入れなくて......、いやぁアサダです(まっすぐ相手の目を見て、しっかり顔を見せる)」
担当者 「(戸惑いながら)はぁ......ええっと......、状況をもう少し聞かせていただけますか?」
アサダ 「......(ダメか)」

 まぁ、こんな感じで謎のアピールは大失敗(泣)。こんなことしても、保活にはなんの効力も発しないことがよーくわかりました(考えてみれば当たり前だ)。
 家に帰って妻とこんなダメダメエピソードを喋っていると、優しい妻はこう言いました。

 「お父ちゃん、保活頑張ってくれるのはありがたいけど、いまんところそんなに仕事入ってきてないし、なんとか家でN美ちゃんみながらできるし、焦らんくてええんちゃう」
 「まぁそうやね。でもある程度動いておかないと、急に動いて入れるもんでもないからなぁ」
 「いまN美ちゃん、めっちゃ可愛い時期やから、正直、家でじっくり子育てしたいってのもあるしなぁ。でも、うーん、仕事もしたいけど。複雑やわぁ」

 ちなみに現在、妻は僕と一緒に「事編(kotoami)」という屋号で個人事業を営み、主に僕が企画や執筆を手がける一方、彼女は経理やマネジメント、編集作業などを手伝ってくれている状況で。この会話をしていた時点ではまだ僕の手伝いレベルですんでいたのだが、そのあと状況が変わることに。
 滋賀に住んでいた際の職場から、比較的まとまった仕事の依頼が妻めがけて入ってきたのだ。ちゃんとその仕事をコンプリートしようと思ったら......、N美を見ながらでは正直ちょっと難しい。妻も「いよいよ保育園探さないとね。N美と離れるの寂しいけど......、もう大人しく寝ていてくれる月齢も過ぎたし、これから仕事するなら家ではやっぱり厳しいと思うわ......」と。

■そろそろ本気で預けないと!?
 そうこうしていた5月末のお昼。仕事場で手巻き寿司とななチキ(ファミチキよりLチキよりななチキ派)を頬張りながら、何気に保育園の空き情報を確認していたら、ある認可外保育園(のうち認証保育所)の0歳児クラスに「空き1」の表示が。
 認可園の空き情報は毎月1日更新なので定期的に見ていたけど、認可外はとくにいつ情報が更新されるか知らずに気まぐれ閲覧だったので、「おお......、この時期に空き出るって珍しいんとちゃいますのん」と呟きながら、ポコポコ保育園(仮称)のホームページや住所を検索。
 ち、近い。家からは歩いて15分、自転車だと7、8分かかるかかからないかの距離だ。長女M子の通うニコちゃん保育園(仮称)とは逆方向ではあるものの、ここなら先にM子を送って一回家に戻り、次女N美を送ったとしても、そう負担はなさそう。
 でも気になるのは、いわゆるひとつの高架下保育園であること。知人ママに聞いてみると悪い噂は特に聞かないと。いろいろ考えることはあるけど、何よりもまず本当に空いているのか問い合わせて、実際に見学してみないことには始まらない。早速、園に電話してみた。

アサダ 「もしもし......、私〇〇町在住のアサダと申します。0歳児の娘がおりまして、空きが1名あると役所のホームページで拝見したんですが......」
先生 「はい。今なら空いていますよ。お嬢様は何ヶ月ですか?」
アサダ 「もうすぐ7ヶ月になります」
先生 「わかりました。見学されますか?」
アサダ 「はい! 妻と日時を相談し、またご連絡します」
先生 「はい、お待ちしております」

 ものすごく淡々とした感じだが、逆に言えばめちゃくちゃ落ち着いている雰囲気の女性の声。ベテランの先生だろうか。とにかく脈あり。でも今さらながら、認証保育所の保育料って確か所得とか関係なく、一律で結構お高かったような......。
 気になって保育料を確認すると、週5日(月~金)の160時間枠で6万円強。おお、たけーー。うちはまったく裕福でないので、なんとかしておくれやすって感じだが、確か認可外には市から補助金が出たよねってことを思い出して、役所に電話! 小金井市の場合「第二子は一律3万円支給」されることがわかり、3万円強ならなんとか払えそうでひとまず(まだ入園が決まってもないのに)胸をなでおろす。

 そうこうしていたら夕方になりM子を迎えにニコちゃん保育園へ。今日は名作絵本『そらまめくんのベッド』(なかやみや作・絵、福音館書店)を読みながら、リアルそら豆むき体験をしたとのことで、「おお、それめっちゃイケてるやん」と思いながら家に連れて帰り、そのまま家でごろんごろんと転がっておられるN美を抱き上げながら、妻にポコポコ保育園の空きのことを話す。
 妻は、「あぁ......。入れたらいいな......。でもほんまに入れてしまったらどうしよう? 寂しいやろうなぁ......、でも仕事せなあかんしなぁ......」と狭いリビングをぐるぐる歩き回りなら独りごつ。
 「いや、そもそも見学に行かないとどんな園かもわからんし、今の時点で入れる保証なんてないから、それはザ・取り越し苦労やで。とりあえず行こや」「よし、そうやね!」ということで、早速その場で園に電話。翌日の夕方から3日間、北海道に出張が入っていたため、直近の日時を狙って、そのまえの13時に見学を申し込んだ。

 さて見学当日。妻とN美と僕の3人でいざ出陣! 園はJRの高架下にあるため、建物の構造上、園庭と園舎と自転車(ベビーカー)置き場が鰻の寝床のように細長く続いていく。入り口でチャイムを鳴らすと、昨日の電話の相手とおぼしき女性の先生が対応してくださった。
 年配でいかにもベテランという風情。園長先生だった。淡々としているが決して愛想が悪いわけでなく、相手を落ち着かせる穏やかな語り口。ちょうどお昼寝タイムだったので園は静か。ヒソヒソ声で各クラスルームを見学させていただくと、ほかの先生方もニコニコ対応してくださった。電車の音がどれくらい大きいのか気になっていたが、専門家を入れて防音対策をしたとのことで、実に静かだ。

 一通り園内見学を終えたのちに、こちらの事情を聞いてもらった。現在、お姉ちゃんが別の認可保育園に通っているが、妹は同じ園に入れなかったこと。妻の仕事はフリーランスのため時期によっても変動があり、今までは比較的落ち着いていたので、この子を家でみていたが、状況が変わってきたこと。いずれはお姉ちゃんと同じ園に通わせたいが、いつになるかわからないので、まずは預かってくれる園を求めて、父親が中心になって保活してきたこと。娘はまさに離乳食が始まったばかりで、そしてまだ人見知りしない状況であること。実際に預けるとなったら、基本は週5日だが、妻の仕事の状況をみながら時間を短くしたり、ときに家でみたりと、臨機応変に預けられるのが希望だということ。

 園長先生はひとつひとつの話に頷きながら、「よくわかりました。入園を希望されるなら、後日改めて面接をうけていただき、そのうえで他の希望者とともに抽選となります」と言った。僕らは家に帰って相談し、「環境のことで気になることがないわけではないが(※2)、先生(園長以外も含めて)の落ち着いている感じがかなり好印象だったので、ここは申請してみるか」ということに。
 妻は「いやあ、やっぱり抽選やんね......。そんなにすぐ決まるみたいな甘い話ないよね。落ちたらショックやなぁ......。でも、通っても寂しいなぁ......」と、どストレートに複雑な気持ちを、またも狭いリビングをぐるぐる歩き回りなら独りごつ。あげくの果てに「お父ちゃんの悪魔! こんな可愛いN美ちゃんを、もう保育園に入れようとするなんて! この人でなし!」となじる始末。いやいや、まだ決まってないし(笑)。「でも! やっぱり仕事もしたい! でも......」(以下同文で20リピートくらい)。妻と申請資料の打ち合わせをすませると、園に電話し3日後に面接が決定。僕はそのまま羽田空港へ向かった。

■新たなステージへ
 面接には僕も同席したかったが、あいにく時間が合わず、妻とN美に託す。認可外なので、面接で特に娘と親のどの面を見るのかは、向こうの基準次第。だからこっちは想像するしかない。他の応募者はどんな家族だろうか。うちの子は7ヶ月でまだ離乳食を始めたばかりだし手がかかると思われるだろうか、逆にもっと月齢が小さい子の方が預かりやすいから、かえってうちは不利だろうか、そもそも我々親の印象はどう映っているのだろうか? 見学のとき俺は髭をそっていたか、妻はちゃんと園長の目をみて話せるだろうか......。
 すみません、わけがわからなくなってきましたが、とにかく想像すればするほど取り越し苦労でしかない。

 面接のあと、妻から一報をうける。「終わったよ。なんかね、"多分大丈夫だと思います"って最後に言われたわ。もう今晩には電話で結果知らせてくれるって」。おお......、なんだかわからんが、そんなことをわざわざ面接の最後に言ってくれるってことはもう「いける」ってことよね!?
 僕はそのまま長女M子をニコちゃん保育園に迎えに行き、自転車の後ろに乗るM子にこう話しかけた。

 「あのさ、N美ちゃん、来月から保育園に通うことになるかも。どう思う?」
M子 「ええっ、M子と一緒!? やったぁ! じゃあ、ひよこ組さんかな?」
 「ええっとねぇ、M子と一緒のニコちゃん保育園じゃないんよ。あっちの方にあるポコポコ保育園ってところでな」
M子 「この前通った、○○屋さんの近く?」
 「そうそう。だからしばらくは別々やねんけど、いつか一緒に行けるようになったらええな」
M子 「M子、N美ちゃんが保育園行く朝、お手伝いするね!」
 「......(涙)」

 家に帰ると、妻が園長先生とじっくり話せたと報告してくれた。面接の終わりぎわに「先生、私、正直に言えば預けたくないんだと思います。だってこんなに可愛いのに、なんで預けないといけないのかと。でも仕事もあるし、やっぱり預けたほうがいいのもわかるし......」と、本音を吐露したらしい。また慣らし保育はもちろんのこと、仕事が落ち着いているときは家で共に過ごす時間を増やすなど、0(預けない)か100(フルに預ける)ではなく、家庭と保育園の協力体制を柔軟に築いていきたいということも伝えたと。
 すると園長先生は、妻の複雑な心境を察しながら笑顔を浮かべ「そうよね、可愛いもんね。よくわかりますよ。共に頑張りましょうね」と言ってくれたらしい。そのやりとりが妻をエンパワーメントしたのだろうか。数日前に比べて妻の表情は晴れやかで落ち着いているように見えた。

 そして......。
 M子とN美を風呂に入れていると、妻がお風呂場のドアをドンドンと叩いた。
 「正式に決まりました!」
 ひとまずひとまず。うちの家族の新たなステージに向けて、4人で祝杯をあげた。


 みなさん、「ホカツと家族」ではこの第8回まで、主に「保育」や「保活」にまつわる話題をお届けしてきましたが、これから先は「家族のあり方」を中心にお届けしていきたいと思います。
 もちろんこれからも(認可園入園に向けた)保活は続きますし、そもそも保育園に二人の娘が通うなか、親と保育士がどんなコミュニケーションを築けるのかといったことも引き続き考えていきたい。
 とにかく、もう少し視野を広げて展開していきますので、これから読んでくださいね。



※1 東京都独自の基準により設置された保育所。認可保育所よりも開所時間が長く、全施設でゼロ歳児保育を行うなど、共働き世帯などの都市型保育ニーズに対応している。定員・施設面積などの設置基準も認可保育所より緩やかで、A型 (駅前基本型)とB型(小規模・家庭的保育所)の2種類がある。平成13年(2001)5月に制度発足。(『デジタル大辞泉』より転載)
※2 とりわけ高架下の保育所に対しては、電磁波問題が取り沙汰される。子育てに関する考え方を二分するデリケートな問題であると思うし、我が家でもこの件について調べて話し合った結果、応募に至った。例えば、
http://openblog.seesaa.net/article/441600710.htmlhttps://ameblo.jp/kei-van-city/entry-12224260044.html を参照。