
演歌歌手が歌を生かした副業を始めようとすれば、カラオケ教室かカラオケ・スナック経営しかない。ときには「昼はカラオケ教室、あるいは昼カラ喫茶、夜はカラオケ・スナック」という形態になったりもする。
プロの歌手がママさんやマスターを務めるのだから、そういうカラオケ・スナックは、飲んでいてすごく楽しい。ショーのチャージなんかなくて、キープ・ボトルを飲むだけのお金でプロの歌を堪能できるのだし、そういう店にはたいてい歌自慢のお客さんが集まってくる。ママやマスターのファン、というひとばかりが常連になるのだから、酒癖のわるい客や、酔って騒々しすぎる団体も来なくなる。演歌歌手のスナックって、実はすごく居心地いい遊び場なのだ。
今回はいつもと趣向をかえて、そんな演歌歌手の経営するカラオケ・スナックの典型をご紹介しよう。この連載の第9回でインタビューした、秋田の歌姫・あずさ愛さんが経営する「パブやすらぎ」だ。
秋田駅前からタクシーでワンメーター、飲み屋街のはずれのビルに、あずささんの「やすらぎ」が開店して、もう16~17年になる(「正確な年は忘れちゃった!」そう)。
ここで第9回のインタビューを読み返していただけるとうれしいのだが、主婦だったあずささんは、20歳のときから約10年間続いた「ままごとみたいな夫婦生活」に終止符を打ち、ひとりになったそのころに、パブやすらぎを開いた。
はじめのころはあずささんがママになって、バイトを雇って店を切り盛りする毎日。主婦時代につちかった料理の腕が評判になって、食事目的の女性客が多かったという。「人気メニューはね、グラタンでしょ、きりたんぽでしょ、それから特に漬け物! "いい加減漬け"って名づけてるんですけど、らっきょうを漬けた酢の中に、いろんな野菜を漬け込んだので、これが大人気だったのよー」。
10年ほど前からあずささんは歌手活動を再開。東京と秋田を行ったり来たりするようになって、店に立つのが難しくなった。それからは昼のカラオケ喫茶、夜のパブと2部構成にして、昼夜ふたりのママに店を任せ、自分は「ときどき行って、飲んで騒いで歌ってるんです」。
地元のあずさ愛ファンクラブの面々は、そんな日を狙って店に集まってくる。この夜も、こちらが着いたころにはすでに大盛り上がりの最中。「東京から来た人には、食べてもらわなくちゃと思って、用意しといたのよ!」と、グラタンやらきりたんぽやら、並びきれないほどの料理でテーブルは満杯。
もちろん、お客さんたちはみんな歌上手だ。次々と入るカラオケにあわせ、広いフロアで歌って踊って、見ているだけでも楽しい。ソファで座りながらマイク持って、なんてダメなんですね。
あずささん本人の歌もたっぷり聴けて、もう食べられないぐらいお腹いっぱいにしてもらって、帰りには「ホテルで食べて」とオニギリまでラップしてもらって、フラフラで帰って爆睡。ごちそうさまでした!
出張や旅行先で、今晩は飲みたいなと思っても、知らない町の知らない飲み屋街では、どこに入っていいかわからなかったりしますよね。そういうときに、「歌手だれだれの店」と看板にあるのを見つけられたら、それは当たりってことなのかも。
★パブやすらぎの、あずさ愛ファンクラブ・ナイト★









