告白します。
三月某日 晴
姪の中学入学祝いにと、図書カードを買いに行く。
「デザインは、どれにいたしましょう」
と、本屋さんのおにいさんが、何種類もの模様のカード見本を見せてくれる。
小学校を卒業しようという女の子が好きそうな模様を選ぶべく、じっくり見入る。
やはりここは、ピーターラビットだな。そう決めて、決定をおごそかに口にする。
けれど、
「そのピーターラビットのにします」
と言うかわりに、
「その、へんに人くさいウサギのにします」
と言ってしまう。
もしやこれは、自分の中にある、ピーターラビットへの無意識の屈折した愛憎の発露か!?
今後、ミッフィー・キティ・スヌーピー・某ランドのネズミ・くまモン等々に対する屈折をうっかり発露しないよう、厳重に注意することと、心に期する(チェブラーシカに関しては屈折していないから、大丈夫)。
三月某日 晴
思いついて、昨年末に人からいただいたシクラメンの鉢植えを、いつものおぐらい場所ではなく、一日よく日の当たる場所に移してやる。
(これでますます花をつけることだろうて)
と思いつつ、二時間後に見ると、まっすぐに立ってたわわに花を咲かせていた茎が、すべてぐんにゃりと倒れている。
それまでは、ケーキにさされたろうそくの炎のようにぴんと上を向いていた花が、突然四方八方に広がって、葉っぱよりも下方にたれさがってしまったのである。
ひっ、と叫んで、その場で小さくくるくる回る。もちろん、回ってもシクラメンは回復せず。ガーデニングに詳しい知人に電話して聞くと、シクラメンは暑さに弱いとのこと、すぐさま寒いお風呂場の床に移す。
翌朝見ると、茎は元に戻っている。ほっと胸をなでおろす。
三月某日 晴
でも、シクラメンのあのびろんと広がった異様な様子が、どうしても記憶から去らない。怖いのだけれど、もう一度見たくてしかたない。
シクラメンを、ふたたび日の当たる場所に置く。二時間して、行ってみる。茎はすべてぐんにゃり倒れている。ひーっと叫び、風呂場に移してやる。
ということを、三月中だけであと二回おこなったことを、ここに告白いたします。
三月某日 曇
近所に、「世界一気楽な店」という名の、小さな居酒屋がある。
カウンターだけの店である。
おかみは、カウンターの中ではなく、カウンター側の椅子にいつも座っている。
ガラスのがらり扉ごしに、外をじっと見ている。
店の外にさがっている黒板には、その日の品書きがチョークで書いてある。
その字は、いつも少し曲がっている。
ちくわ。骨せんべい。ちょろぎ。魚スープ。
というのが、ここ一週間の品書きである。
お客が入っているのを目撃したことは、一度もない。
さまざまな意味で、不明な店である。
挑戦する勇気は、まだない。
