聞き耳をたてる。
六月某日 小雨
近所を散歩。
児童公園のあずまやで、雨宿りをする。
小学校の四年生くらいの男の子が二人、地べたに座りこんで、おしゃべりをしている。
こっそり聞き耳をたてていた、その時の会話。
「たいへんだ」
「どうしたの」
「近所のおじさんが、総理大臣になっちゃったんだって」
「マジ」
たしかに、菅直人はこの近所に住んでいるのであった。
六月某日 曇
いつも疑問に思うこと。
政治家や要人の家の前で警備をしているSPのひとたちは、お手洗いに
行きたくなった時、どうするのだろう。
たとえば、菅直人が副総理の時には、SPがいつも一人、家の前に立っていた。
さあ、今まさにSPのひとは、お手洗いに行きたくなった。
その時、SPは菅直人の家のお手洗いを借りるのか。
それとも、向かいの家と契約しておいて、そこで借りるのか。
それとも、携帯トイレを常に持って歩いているのか。その場合、
身を隠して携帯トイレを使う場所はあるのか。
そもそも、SPのひとは、八時間はお手洗いに行かなくてすむような
訓練を受けているのではないか。
疑問は、ふくらむばかりである。
六月某日 晴
お酒を飲みにゆく。
近所の、居酒屋さんである。
隣の男女が、しきりにおしゃべりをしている。
こっそり聞き耳をたてていた、その時の会話。
「あのさ、殺したい奴って、いね?」
「いるいる」
「おれさ、どうしてもそういう奴に、やさしくできないんだ」
「そうなんだ」
「おめ、やさしくできるの、殺したい奴に」
「できるよ」
「マジ」
「うん。そいつにやさしくしながら、どうやって殺すかを、
いろいろ考えて楽しむんだよ」
「たとえば」
「たとえば、鉢いっぱいのカメムシを飲ませて殺すとか」
「そんなんで、死ぬの」
「死ぬよ」
「マジ」
児童公園の小学生の会話の方が、なんだか好きだったなと思いながら、
でも、その後男女がいろいろ述べあう「殺しかた」に、興味しんしんで聞き耳をたてる。
ちなみに、カメムシの次に感心したのは、「死ぬほど、さぬきうどんを食わせて、殺す」でした。
死なないと思うけど。
