センスのABC

岡尾美代子

stool 60

 フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルト。今年が生誕120年ということで、 現在、「アルヴァ・アアルト――もうひとつの自然」展が神奈川県立近代美術館で開催中だ。パイミオに造られたサナトリウム(1933年)の再現や、アアルトが撮影した当時のフィンランドの様子がわかる映像、建築の模型があったりと充実した内容となっている。でもどちらかといえば建築家としてのアアルトよりも、家具やプロダクトデザインの方が私たちには馴染みがあるかも。パイミオのサナトリウムのためにデザインされたアームチェア「41 Paimio」をはじめ、ヘルシンキのサヴォイレストランのためにデザインされたペンダント「A330S(ゴールデンベル)」、他にもアルテックのサイドテーブルや、イッタラのフラワーベースなど。なかでも私たちが最もよく目にしているのは、穏やかな脚部のカーブが特徴的なバーチ材を使ったスツールなのでは。名前は「stool 60」。このスツール、3本脚なんですよね。なんと大胆なデザイン! うっかり前のめりになると転んじゃいそうな......。でも3本脚だからこそ魅力的。安定の良い4本脚バージョン「stool E60」もあるけれど、でもね、脚の部分が窮屈そうに見えてしまう。
 この「stool 60」はヴィープリ図書館のためにデザインされた椅子だからなのか、公共の施設によく似合う気がする。スタッキングできるのも便利だし、視界を邪魔しないデザインというか、主張が少ないデザインなので、どんな場所にもすんなり馴染む。普通に見えて、なんてことなさそうな印象があるけれど、でも実は細部にオリジナリティが溢れていて、どこを切り取ってもデザインとして完成されている。それがこのスツールの凄さなのだと思う。
 知り合いのデザイン事務所や、カフェ、ショップの片隅にこのスツールがあると、「おっ、いい椅子を置いて」と思う。それは一見普通なこのスツールを選ぶ人=センスがいい、という図式が私の中にあるから。そしてそれはアアルトのプロダクト全般に言えるかもしれない。

私もついに「stool 60」を買ってみた。箱のグラフィックデザインも素敵。

......でも私が選んだのは、オランダのデザイナー、ヘラ・ヨンゲリウスのモデル。天邪鬼かな(笑)。

スツールは組み立て式。脚のカーブがきれい。

「アルヴァ・アアル――もうひとつの自然」展にて。アアルトがデザインしたアルテックの椅子のポスター。メインヴィジュアルは使い込まれた「stool 60」。

『2001年宇宙の旅』の宇宙船を思い出させるペンダント。アアルト設計のルイ・カレ邸で使われていたもので、ビルベリー(ベリーの一種)という愛称がある。『スター・ウォーズ』の「BB-8」にも似てる?

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2018.11.14
チャウチャウ、ちゃう。
2018.11.01
stool 60
2018.10.17
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PROFILE

岡尾美代子
(おかお・みよこ)

高知県生まれ。スタイリスト。
雑誌・書籍などさまざまな媒体のスタイリングを手がけるほか、
鎌倉で友人とともにデリカテッセン「DAILY by LONG TRACK FOODS」を営む。
『Land Land Land』『Room talk』『肌ざわりの良いもの』『雑貨の友』などの著書がある。

Instagram:@miyokookao  LONG TRACK FOODS