センスのABC

岡尾美代子

小さな家

  この頃よく考えるのは、自分が住みたいと思う家についてのあれこれ。それは「理想の家」を空想するのともまた違っていて、もっと現実的なことだ。
 1月末にパリ出張に行った時に、パリ郊外にあるサヴォア邸を訪れた。ル・コルビュジェが作った私邸を見るのはこれが初めてだったのだけれど、あまりに素敵で胸が高鳴ってしまった。建築の知識が全くない私にも、これが1930年代に造られたことが、いかに画期的だったかということがわかるぐらいに。部屋と部屋の繋がり方、部屋の続きのようなテラスに、それを自然に区切る大きな窓(とにかく窓が素敵なの)。「うわーっ!」を連呼しながら(それしか言葉が出ず......)見学をしたのだった。こんなところに住めたらどんな気分なんだろう。主人への羨ましさを感じつつも、その時に思ったのは、自分はもっともっと小さな家がいい、ということ。サヴォア邸の脇に建っていた庭師の家のように。
 私が今住んでいる古い日本家屋は、元々建っていた家に出入り口のある洋風のリビングが建増しされていて、2世帯住宅ではないけれど玄関が2個あるという、何とも不思議な造りになっている。廊下で繋がっている建増し部分は物置となっているが、1人暮らしの身には正直、必要なくて、持て余している状態だ。閉めたドアの先に空き部屋があるというのはそんなに気持ちの良いものではなく、そんなこともあり、広すぎず狭すぎず、身の丈に合ったサイズ感が心地良い暮らしの条件のひとつなのかもということに気づいた。そしてこの家は老朽化していて、このまま住むなら大規模なリフォームか、立て直しをしなくてはいけないという問題を抱えている。なので予算内で実現可能な「住みたい家」を自問自答している日々なのだが、結論はまだ出そうもなく......。
 そう言えば、ル・コルビュジェが老齢の両親のために建てた「小さな家」という平屋建ての家がある。いつか行ってみたいと願っているが、そこに行けば何かひらめきが降りてきたりするかな? そんな逃避的なことを考えつつも、やっぱり自分のための小さな家が欲しいなあ、と思う。
 いつかその願いが叶いますように。

サヴォア邸の横にちょこんと建っている庭師の家。ここは見学できず。でもこの窓の並び、きっと中も暮らしやすいに違いない。

 

こちら、サヴォア邸の青い壁が印象的だった部屋。明かり取りの窓、その下の台、素敵すぎる。

 

昨年訪れた、デレクジャーマンのプロスペクト・コテージも素敵だった。小さな家をめぐる冒険?

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PROFILE

岡尾美代子
(おかお・みよこ)

高知県生まれ。スタイリスト。
雑誌・書籍などさまざまな媒体のスタイリングを手がけるほか、
鎌倉で友人とともにデリカテッセン「DAILY by LONG TRACK FOODS」を営む。
『Land Land Land』『Room talk』『肌ざわりの良いもの』『雑貨の友』などの著書がある。

Instagram:@miyokookao  LONG TRACK FOODS