センスのABC

岡尾美代子

コインランドリーの誘惑

   旅が長くなると段々と気持ちがムズムズしてくる。ああ、洗濯したいな、と。トランクの中の全ワードローブを洗って、さっぱりと気持ちいい状態に戻したくなるのだ。
 下着やソックス、ハンカチぐらいならお風呂のついでに洗えるけれど、パジャマや服となると手で洗うのは一苦労。それに石鹸を使うと乾いた時にカピカピになってしまうし。ホテルのランドリーに出していた時期もあったけれど、ある時思いきって街のコインランドリーを使ってみたら、結構簡単だし、短時間で服もふっくらと仕上がって、「これ、いい!」ってことになったのだ。
 ドラム式の洗濯機が整然と並ぶコインランドリーは元々私が好きな場所でもある。洗濯機の中でくるんくるんと回る洗濯物を眺めているのも楽しいし(つい見入ってしまうのだな)、店の中の洗剤の香りと暖気が混ざった独特な匂いも好きだ。それにちょっぴり地元気分を味わえるのも嬉しかったりする。
 ロンドン、パリ、バークレー、ブルックリン。いろんな街で地元の住人に混ざって洗濯をしてきた。勝手がわからないから、人が使っているマシンの乾燥時間を勝手に長くしちゃったりと、失敗も数々。でも拙い語学力でも、マシンの使い方や洗剤の買い方を尋ねると、結構みんな親切に教えてくれる。まあ、ぶっきらぼうな人もいるけれどね。
 1週間ぐらいの旅でも帰国日のフライトが夜で、午前中に時間がある時は、ふらりとコインランドリーへ向かう。もう家に帰るのにどうして?と思うかもしれないが、洗濯物が溜まったトランクを持ち帰るよりも、洗いたての服が収まっているほうが気持ちいいと思うから。それに帰国して家でトランクを開けた時に、外国の洗剤の香りがするのも旅の余韻のような気がして。
 朝早くの寒々としたコインランドリーで、コーヒー片手に外の景色をぼんやり眺める時間。店の中には常連らしいおじいさんと私の2人だけ。特に会話を交わすわけではないけれど、同じ時間に、同じ場所にいる連体感。マシンの回る音、洗剤の香り。そんななんてことのない時間も、振り返ると旅の思い出だったりする。私がコインランドリーへ行きたくなるのはそんな理由もあるからかもしれない。

これ、どこのコインランドリーだったかな? この店ではないけれど、最近行ったパリのコインランドリーは、店の奥の天井に大きな穴が空いていて結構な雨漏り状態だった。でも営業中。そして私もそこでしっかり洗濯をした次第。

 

洗濯した服と一緒に持ち帰るのは、隙間を埋めるクッション代わりのポテトチップス。知人から教わったこの方法、なかなかいいアイデアでしょ。ちなみに私が1番好きなポテチはWALKERSのソルト&ビネガー味! だからロンドンから帰る時は、思いっきり詰めて帰ります(笑)。

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PROFILE

岡尾美代子
(おかお・みよこ)

高知県生まれ。スタイリスト。
雑誌・書籍などさまざまな媒体のスタイリングを手がけるほか、
鎌倉で友人とともにデリカテッセン「DAILY by LONG TRACK FOODS」を営む。
『Land Land Land』『Room talk』『肌ざわりの良いもの』『雑貨の友』などの著書がある。

Instagram:@miyokookao  LONG TRACK FOODS